連載 多国籍軍に学ぶ組織変革(最新連載)

212. 最速で失敗し、最速で成功する!

AI時代の若手起業家たちがよく口にする言葉です。

これは、命を懸けた戦場で未完成の最新兵器を実戦投入する軍隊の発想と同じです。

 

マッキニーロジャーズも、失敗を恐れずに疾走しています。

今月から、連載深掘記事をAI漫画とAI音声で動画にする挑戦を始めました。

 

ぜひ、みなさんの周囲に紹介して、Mission Leadership®︎のエッセンスを共有して下さい。

共通言語を持つチームは『常に期待を上回る』成果を生み出します。

 

私たちも、試行錯誤しながら挑戦を続けて参ります! 

 

211. 変化の激しい今こそ持続力!

「戦場では、長引く戦闘や絶えず変化する戦況の中で、最後まで戦い抜く指揮官が求められる」と、元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。単発的に派手な勝利をもたらすだけのリーダーは歴史に名を刻めない。

 

古代ローマでは、持続する力を持つリーダーが高く評価された。塩野七生は地味な二代皇帝ティベリウスを高く評価している。理由は初代皇帝アウグストゥスの後任として、帝国を長期間安定させ、後継体制を整えたからだ。

 

ビジネス界の酷い例だと、転職初年度は前任者の悪口で自分を正当化し、2年目は無理なコスト削減で数字を作り、3年目は野心的な目標を設定し、年度終了前に転職する経営者がいたりする。短期的な業績だけアピールし、苦しくなる前に逃げる、これでは焼畑農業だ。

 

同じ会社で結果を出し続けること、あるいは会社が変わっても同じ分野で成果を積み重ねることは簡単ではない。尊敬に値するのは、花王のように何十年も減配しない企業や、ノーベル賞を取った大隅博士のように、東大、岡崎国立共同研究機構、東工大と、オートファジーの研究を粘り強く続ける学者だ。

 

市場やテクノロジーの変化が加速している現代では、誰もが逃げ出したい誘惑に駆られることがある。

今こそ、持続する力を持つリーダーが真の成果を生む。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

210. リーダーに教養は必要か?

 「軍隊の高級将校には、広く深い教養が不可欠だ」と、元英国海兵隊総司令官サー・ロバート・フライは言う。戦場の司令官は、限られた時間の中で重大な決断を迫られる。戦略知識や戦闘技術だけで国家の命運にかかわる決断は出来ない。大局観、歴史観、人間理解、倫理観――つまり教養が問われる。部隊の兵士の心に火を点けるのも同じだ。 気合や根性論だけで、人は命を懸けられない。 

だから士官学校では戦略学習や射撃訓練だけではなく、歴史、哲学、倫理、地政学など幅広い学問を学ぶ。国の未来を左右する決断や、生死のかかった現場での統率には、人間そのものへの深い理解が必要だからだ。 欧米のトップスクールがリベラルアーツを重視するのも同じ理由だ。法律、会計、マーケティングだけを学んでも、人を導く力は身に付かない。正しい決断も、社員の心を動かす言葉も生まれない。 日本企業も、この10年ほどでリベラルアーツ教育に力を入れ始めた。かつて「エコノミックアニマル」と呼ばれた時代からすると隔世の感だ。 

 

巨大国家の指導者が国益だけを叫び、巨万の富を持つ経営者が私利私欲に走る。そのような時代だからこそ「自らを正当化するための知識」ではなく、異なる価値観を理解し、人間として倫理を問い続ける、本来の意味でのリベラルアーツが求められる。

 

もちろん、教養だけで人は動かない。 深い教養を持つリーダーがMission Leadership®を身に付けた時、組織は社会に貢献する価値を生み出す。

 

教養は何が正しいかを「考える力」を与える。

Mission Leadership®は、それを「実行する力」を与える。

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。 https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry    

   

209. 偽物は見抜かれる

「戦場の兵士は、上官の嘘を敏感に見抜く」と元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。自らが信じていない作戦を口先で説明する上官や、自分自身が諦めているのに演技で叱咤激励するリーダーは、瞬間で部下の信頼を失う。

自分の生死を握る上官の言動に対する兵士の感度は高い。

リーダーは俳優とは違う。例えば、将軍役の俳優は、内容すら理解していない作戦を自信満々で演技する。一方、戦場のリーダーは恐怖や不安を乗り越えて信念を持って作戦を伝える。

リーダーに求められるのは、演技の上手さではなく、覚悟を乗せて伝える力だ。

 

ビジネスでもリーダーには“信念を伝える力”が求められる。組織として決めた計画に不満や不安を示す上司に、部下は誰もついて行かない。

 

上司が「こんなやり方で成功するはずがない」と言う計画の成功確率は低い。

上司が「私はこのやり方で必ず成功すると信じている」と言う計画の成功確率は上がる。

 

部下に説明する前に「自分は本当に成功すると信じているか?」と自問するのが本物のリーダーだ。

やると決めた以上「成功する!」と言い切って、チームの力を引き出してみないか?

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

208. AIを使いこなすリーダーは、部下の力も引き出す

「部下に細かく指示をする上官は部隊を壊滅させる」と元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。

激しい戦闘現場で部下の思考は見えない。ブラックボックスだ。だから、部下の思考を管理するのではなく、部下に与えるミッションを設計する。軍隊で『任せる』際は、目的と状況(制約)を明確にする。優秀な部下は与えられたミッションの中で自由度を発揮して高いパフォーマンスを出す。

ビジネスリーダーが抱きがちな「部下が勝手にやって失敗したらどうする?」 「評価責任は上司なのに?」 という不安を、命の掛った戦場の指揮官は明確なミッション設計によって克服しているのだ。

 

実は、この構造は現代のもう一つの『部下』にも当てはまる。AIの使い方だ。

プロンプトを与えればアウトプットは返ってくるが、その過程は見えない。ブラックボックスだ。プロンプトで目的と状況(制約)を明確に入力する事が、質の高いアウトプットをもたらす。AIを『管理する』のではなく、AIに『任せて』質の高い回答を得る。前提は、部下やAIはブラックボックスであることを受け入れることだ。例えば、

「商品別の売上目標シートに従って営業して下さい。日程管理は顧客別の訪問計画表に従って下さい。商品説明はマニュアル通りでお願いします」と指示すると、部下もAIも思考が止まる。値引きしかアイデアの出ない会社になり、優秀な社員は辞めてしまう。

「目標は売上10%成長です。ただし、新規獲得は利益率20%以上の案件に限定します」と伝えれば、部下もAIも「誰に」「何を」「どのように」売るかを考え、売上だけでなく利益額も10%以上伸びる。

 

軍隊の最新マネジメント理論Mission Leadership®をマスターした組織は、AIも使いこなす。実際、米軍はAIによる意思決定支援システムをいち早く実戦配備し、攻撃目標の設定やドローンの運用に利用している。

逆に、AIを使いこなせないリーダーは、部下も使いこなせない。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

207. 理論と実戦の差分を埋めろ!

「作戦通りに戦闘が進む事は決してない。No plan survives the first contact(計画は最初の接触て破綻する)だ」と、元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。戦争では戦略が必要だ。だが勝敗を決めるのは、想定外への対応力だ。その為に現代の軍隊は、

 

✓戦闘シミュレーションの中で想定外の状況を作り、対応訓練を繰り返す

✓戦闘中の制約を明確にすることで、その裏返しとして現場に自由を与える

 

どちらも、理論と実戦のギャップを埋める為に軍隊が編み出した手法だ。

 

ビジネスでも戦略通りに現実が進まないことは当たり前に起こる。

 

現場は「戦略がおかしい」

企画は「実行力が低い」

 

と言って、責任を擦り付け合う事も起こる。不毛だ。問題はどちらが間違っているかではなく、

 

「想定外は当たり前」

 

という根本的前提を見落としている事だ。

 

想定外を言い訳にする組織は衰退し、想定外を前提に動く組織だけが生き残る。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

206. 厭戦気分を甘く見るな

「厭戦気分を、情熱や気合で払拭しようと考えるのは間違いだ」。長期戦を経験した軍隊指揮官が共通して語る教訓だ。

 

ビジネス界でも、何年にもわたる長期プロジェクトや、泥沼化する海外市場参入では、同じ厭戦気分が広がる。赤字が続く新規事業で、経営陣が「踏ん張りどころだ!」「ここで諦めるな!」と気合と根性を求めた結果、優秀な人材が離職してしまう、といった例は多くの企業で見られる。

 

戦闘が長期に及ぶと、前線の兵士は確実に消耗し、ある瞬間を境に静かに崩れていく。世界中で二千年以上蓄積された軍事研究は、厭戦気分に対処する鍵は情熱ではなく次の3つだと示す。

 

① 意味づけ:なぜ戦い続けるのか? 

② 回復:休息とローテーションはあるか? 

③ 公正さ:負荷と評価は公正か?

 

短期で結果が出る仕事はほとんどない。厭戦気分を甘く見ず、常に自らに問い続けるリーダーが勝ち続けるチームをつくる。 

 

205. 軍規を厳しく運用しろ!

「軍規が厳しいのは、兵士に自由度を与える為だ」と元英国特殊部隊将校ダミアン・マッキニーは言う。戦場では逐一指示を仰ぐ時間は無いから現場判断が尊重される。武器を持った兵士という危険極まりない存在に、必要な自由度を与えるしくみが軍規なのだ。

 

軍規が一般社会より厳しいのは軍隊組織が冷酷だからではない。命令違反、敵前逃亡、情報漏洩が、部隊全体の死に直結するからである。

運用面でも、越えてはならない一線を越えた瞬間に、軍規と軍事法廷によって厳しく裁かれる。軍規違反が続いたり、繰り返されたりする事は許容できないからだ。

 

ビジネス界に目を移し、最近の生命保険会社の不祥事を知ると、フルコミッションという高い自由度を与えているにもかかわらず、規律(軍規)違反への対応が甘かったことに驚く。

 

違反者が出ると、自由度を減らせと声が上がる。間違いだ。

規律を厳しくすると、自由度が減ると文句が出る。間違いだ。

 

リーダーは、一見矛盾する「自由」と「規律」の両立を、社員に納得させる努力を怠ってはならない。

 

社員に高い自由度を与えたければ厳しい規律が必要なのは、軍隊組織が証明している。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

204. 戦闘直後のレビューが生死を分ける

「軍隊組織では作戦終了後30分以内にキーメンバーでレビューをするのが常識だ」と、元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。「かける時間は10分以内。銃身が熱いうちにやるから『ホットデブリーフ/Hot Debrief』と呼ぶ」。

軍隊がHot Debriefを重視するのは、①記憶が鮮明で現場感覚がある内に振り返る為と、②恐怖・迷い・達成感などの感情を共有する為だ。Hot Debriefを習慣化した組織は、1時間後に始まる次の戦闘の中でも学びを活かす事が出来る。

もちろん、詳細な振り返りは後日アフターアクションレビュー(AAR)で行う。

 

ビジネス界ではAARが重視される。現場感覚やその時の感情よりも、論理的な説明や正確な報告が求められるからだ。

AARにHot Debriefを組み合わせれば、貴重な現場体験を次に生かす仕組みが生まれる。

重要な会議や商談の直後、5分使ってHot Debriefをやる。「何が起きたか」「何を感じたか」を全員で言語化するだけで、組織の学習速度は劇的に上がる。

 

あなたの組織は会議直後に「お疲れ様でした」で終わっていませんか?

次回の会議で、あと5分使ってHot Debriefを試してみませんか?

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

203. エンゲージメントサーベイを舐めるな

「軍隊組織のエンゲージメントサーベイのスコアは、ビジネス組織より遥かに高い」と、元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。

軍隊のサーベイの歴史は古く、第二次世界大戦直後から約80年続いている。1990年代から本格導入が始まったビジネス界と比較して倍以上だ。軍隊ではいち早く、モラル、結束、信頼などの定量化の必要性に迫られたからだ。

軍隊のスコアが特に高いのは、  ①パーパスの理解、②任務(=ミッション)の意味付け、③仲間への信頼で、逆に④待遇についてはビジネス組織より低い。軍トップと将校が、①国を守るというパーパスに誇りを持たせ、②目の前のミッションの重要性を説明する事で、③兵士同士が互いに命を預けて戦う文化を作ってきたのだ。

 

ビジネス界でも、④待遇の改善だけで社員のモティベーションアップを図るのではなく、①パーパスと②ミッションがエンゲージメントスコアを押し上げる。エンゲージメントスコアの高い組織は中期的に高いパフォーマンスを発揮する。

 

軍隊が80年かけて証明してきたのは、「持続的なエンゲージメントは『待遇』ではなく、『パーパスとミッションの腹落ち』で生まれる」という本質だ。

 

※エンゲージメント:関与・愛着・結束・献身などの総称。日本語1語では意味を取り切れない

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

202. 新兵器で戦場を変える覚悟を持て

近年、米軍は花形のスナイパー部隊を縮小し、ドローンによる精密爆撃へのリプレースを進めている。大金を投入して育成した精鋭スナイパーに見切りをつけたのだ。理由は、ウクライナ戦争で死傷者の7割以上が攻撃ドローンによると推定されている事だ。ドローンは塹壕に隠れている敵でも真上から発見し精密に爆撃する。現代の戦場ではスナイパーによる水平狙撃だけでは勝てない事を、戦場の兵士が誰よりも知っている。

 

「いつの時代も、新兵器を敵より先に導入し、全軍を変革した軍隊が生き残る」と、元英国特殊部隊指揮官ダミアン・マッキニーは言う。「戦略はどう変わるか?」「未来の戦場はどうなるか?」を予見する力が問われている。

織田信長の鉄砲導入は好例だ。

 

AIがビジネスに革命をもたらすことに疑問の余地は無い。人間を超える能力とスピードを持ち、低賃金で24時間働く新兵器を使いこなせる組織が生き残る。

 

企業の運命を決めるのは、我々ビジネスリーダーの決断速度だ。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   

201. 忖度は悪か?

「上官の意図を先回りして理解する(Anticipate the commander’s intent)ことは、Mission Leadership®の中核コンセプトだ」と、元英国海兵隊将校ダミアン・マッキニーは言う。

上官と合意するのは「何をやるか、何故やるか」というミッションだけだ。この二つの上に組織の戦略ビジョンがある。3つを理解し自律的に動く事で、「組織の連動」と「各チームの自由度」という一見矛盾する二つを両立できる。

Intent を理解した自律行動は、“命令に従う”ことではなく、“戦略に沿って判断する”ことだからだ。

 

森友問題をきっかけに、日本社会では「忖度」が悪い意味で使われている。忖度本来の意味に沿った「上司の意図を察すること」の重要性が失われつつある。

問題なのは「上司の機嫌を取るための迎合」であって、「組織の目的達成のために意図を先読みする行動」は、強い企業の必須要件だ。上司や会社の意図を読まない社員は、暴走か指示待ちのどちらかになってしまう。

上司の側から見ても、古今東西、成果を出すリーダーは、チームに「何をやるのか」「何故やるのか」を理解させている。

 

組織の意図を理解して自律行動する社員は成果を生む。

組織の意図を理解させ自律行動させる上司は成果を生む。

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

   


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