連載 多国籍軍に学ぶ組織変革(バックナンバー: 45-100)

100. チャンスで畳みかける

サー・ゴードン・メッセンジャーは言う。「軍隊ではマイナスだけでなくプラスの想定を怠らない。想定外に良い事態になった時に攻撃を畳みかける為だ」。ビジネスでもチャンスの到来を心待ちにして、攻めの準備をすることが重要だ。

 

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73. 偶然を必然に変える

76. 勝者から学ぶ

 

サー・ゴードン・メッセンジャー  大英帝国二等勲爵士(KCB)、前英国統合参謀次長、トップレベルの作戦の決断と実行に携わる。20年以上に渡り最前線を指揮。

https://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Messenger

   

99. 犠牲を直視して決断する

過酷な戦場では死傷者ゼロが前提の作戦は無い。サー・ゴードン・メッセンジャーは言う。「決断は作戦ミッションの成功を最優先に行う。一人も死傷者を出さない事を優先させては何も決められない。戦死した部下の家族には戦争終結後に個人的に会い、誠意を尽くして弔意と感謝を伝える。その覚悟が厳しい決断を可能にする」。ビジネスリーダーも降格や退職となる社員への敬意を持ち続ける覚悟があればこそ、難しい決断ができる。犠牲から目を背けないリーダーを部下は信頼する。

 

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28. 死なせたくないから厳しくできる

32. 「10年早い」が組織を潰す

41. 「しんがり」を評価しろ !

 

サー・ゴードン・メッセンジャー  大英帝国二等勲爵士(KCB)、前英国統合参謀次長、トップレベルの作戦の決断と実行に携わる。20年以上に渡り最前線を指揮。

https://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Messenger

   

98. 訓練で出来ない事は実戦で出来ない

士官学校の訓練は実戦を再現し、「訓練で出来なくても実戦なら出来る」という言い訳を排除している。軍隊とビジネス両方でリーダー教育をしてきたジェームズ・キャメロンは言う。「どれだけ過酷な訓練であっても、在校中の士官候補生を本物の戦場に投入して訓練成果を試すわけにはいかない。その点、ビジネスでは学習内容を翌日に実務で試せる。『研修で出来ないことは業務で出来ない』を徹底すれば軍隊以上のスピードでリーダーを育成できる」。

 

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22. リーダーシップは不自然

26. 戦場で評価はできない

28. 死なせたくないから厳しくできる

36. 今日やらないことは一生やらない

 

ジェームズ・キャメロン  元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。

   

97. ストラテジック・ショックを克服する

サー・ロバート・フライは言う。「今世紀に入り企業や国家の価値観を根底から覆すストラテジック・ショックが頻発している。東日本大震災への対応で日本人が見せた団結力は、危機に直面する各国にとって改めて参考になる」。自分を過小評価しがちなのは日本人の美徳ではあるが、今こそ自らの優秀さを自覚して活用する時だ。

 

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30. 殺されても死なないから信頼される

37. 心に火をつける言葉

57. 自信を伝える

69. 挫けない、責めない

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

   

96. 覚悟を見極める

マーク・ノートンは言う。「士官学校では、1.いかなる状況下でも 2.高いミッションを 3.全員で達成する、というリーダーアイデンティティを持った人間だけを卒業させる。つまり覚悟の有無だ」。簡単な状況で、低いミッションを、有能な仲間だけで達成するのは誰にでもできる。ビジネスでも同じだ。

 

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7. 極限下のリーダーシップ

14. 士官は作られ将軍は生まれる

32. 「10年早い」が組織を潰す

60. 資質を炙り出す

 

マーク・ノートン  元英国陸軍将校。元サンドハースト王立陸軍士官学校教官。

   

95. 過去に寛大に、未来に厳しく

イラク戦争でマーク・ノートンの部隊がトラックで砂漠を移動中にドライバーが居眠り運転をした。前の晩に彼女とメールで揉めて眠れなかったからだ。マークは言う。「私は『なぜ居眠りをしたのか?』とは問い詰めない。戦場で叱責は禁忌だ。叱責は反発を生み、反発した兵士とは共に命を賭けて戦えない。代わりに伝えたのは居眠り運転が引き起こす結果の重大さだ。横転して敵地に取り残されたら全員の命はない」。過去の失敗には寛大に、未来の責任には厳しく。人間の力を引き出す技術だ。

 

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22. リーダーシップは不自然

65. 戦場に兵士を置き去りにしない

81. 部下と対峙しない

 

マーク・ノートン  元英国陸軍将校。元サンドハースト王立陸軍士官学校教官。

   

94. 成功例を創る

第二次世界大戦中ナチスとの戦いで劣勢に立ったチャーチルは、特別に訓練した小規模部隊を軍隊史上初めて創設し、ドイツ領をゲリラ攻撃した。英国海兵隊特殊部隊の起源だ。ダミアン・マッキニーが説明する。「大局を変えられなくても、敵陣に潜入して目に見える戦果をあげる事はできた。それを宣伝することで兵士と国民の士気が上がった」。意図的に成功例を創る事が有効なのはビジネスも同じだ。その成果のアピールが社員の自信を生む。

 

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46. 真のパラシュート部隊を作れ

73.  偶然を必然に変える

76.  勝者から学ぶ

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

93. 全力で褒める

ダミアン・マッキニーは言う。「作戦成功直後は称賛と感謝だけを伝える。もちろん過程では数えきれないほどの問題が起こっているが、それを指摘したり改善の指示を出す機会は後からいくらでもある」。全力で褒めてくれるリーダーに部下は心酔する。

 

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20. リーダーの言葉は誰もが覚えている

45. 勝どきを上げろ

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

92. 存在を示す

ダミアン・マッキニーは言う。「戦場では指揮官の存在を感じる事が兵士を奮い立たせる。ノルマンディ上陸作戦の開始時、離陸前の空挺隊員一人一人を激励したアイゼンハワー将軍は有名だ。フランスのドゴール将軍は亡命中のロンドンからラジオでレジスタンスを鼓舞し続けた」。

どんな環境下でも『自分の存在が部下を奮い立たせる』という信念を持てばやり方は見つかる。

 

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5. 人はスクリーンではなくあなたを見ている

7. 極限下のリーダーシップ

30. 殺されても死なないから信頼される

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

91. チームメートには性善説

軍人は味方には性善説、敵には性悪説と明確だ。ジェッド・ストーンは言う。「味方を疑いながらは戦えない。他の兵士も作戦通り動いていると信じなければ自分が動けるはずがない。もちろん、敵を信用するバカはいない」。ビジネスでは他部門の仲間を疑うことでエネルギーのロスが起こる。疑う必要を感じさせないリーダー達が全社の力を上げる。

 

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15. 勝つとチームになる

53. 絆を活かす

55. 塹壕から飛び出す力

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。

   

90. 生きた状況報告をする

軍隊用語で戦闘の状況報告をSitrep (Situation Report)と言う。ダミアン・マッキニーの口癖は「Sitrep には Fact (事実)、Insight (洞察)、So What (とるべき行動) の3つを必ず入れろ」だ。事実に加え、洞察と行動が無ければ報告の意味が無い。偵察や戦闘のやりっぱなしでは戦争に勝てない。

ビジネスの日報や週報も同じだ。

 

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38. 抽象的な計画は死をもたらす

59. 全員で考える

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

89. 最悪の敵は最良の教師

ジェームズ・キャメロンは言う。「かつてのテロリストは単なる狂気の集団だった。現代のアルカイダ、タリバン、ISは違う。狂信的であると同時に、資金、武器、練度を備えた強力な戦闘集団だ。民間人を巻き込んだ市街戦での彼らは強い。英米の特殊部隊は彼らから学んで強くなった」。ビジネスでも軽視していた競合が短期間に市場を席捲する事が起こる。命のかかった軍隊と違い、油断や軽蔑から対応が遅れる事も多い。どんな敵からでも学ぶ謙虚な会社が生き残る。

 

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1. 敵を知る

 

ジェームズ・キャメロン  元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。 

   

88. 二つ上のミッションを理解する

ダミアン・マッキニーは言う。「軍隊では必ず二階層上のミッションまで理解させる。つまり部下からは『上官のミッション』『上官の上官のミッション』が見える。作戦遂行に必要な情報としては十分だ。上位のミッションを理解する事は、自分のミッションが『なぜ』重要かの腹落ちにつながる。モティベーションも高まる」。ビジネスでも各リーダーが自分と自分の上司のミッションを部下に伝えれば、部下には二階層上までが見え、組織のフォーマンスが上がる。

 

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34. ナポレオンに学べ!

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

87. 最悪を考える

サー・ゴードン・メッセンジャーは言う。「私は、戦闘の前には必ず最悪の状況を考え抜いた。ヘリコプターの墜落、ミサイルの誤射、現地警察の裏切り。指揮官として何が起こっても動じないためだ。最悪を考えるのと悲観的になるのは違う」。逆境下で部下が見るのはリーダーの態度だ。悠然としたリーダーが部下に勇気を与える。勇気を与えられた部下が想定外の力を発揮する。

 

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6. 笑顔が生死を分ける

17. 最後は直感

 

サー・ゴードン・メッセンジャー  大英帝国二等勲爵士(KCB)、前英国統合参謀次長、トップレベルの作戦の決断と実行に携わる。20年以上に渡り最前線を指揮。

https://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Messenger

   

86. 権力の濫用が思考を止める

戦場では上官が命令した戦闘配置ひとつで各兵士の生存率が変わる。サー・ロバート・フライは言う。「上官が権力を濫用すると部下は恐怖から服従する事に全エネルギーを使うようになる。考えなくなる。現代の複雑な戦闘環境下では致命的だ」。

ビジネスでも上司が人事権を振りかざすと社員のクリエイティビティが無くなる。

 

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9. 後ろから撃たれる上司

25. 考えながら戦え 

85. リーダーシップとは影響力  

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

   

85. リーダーシップとは影響力

サー・ロバート・フライは言う。「現代の複雑な戦闘環境では、部下に『この人の命令なら喜んで従いたい』と思わせるのが良いリーダーだ。高いモティベーションを得た部下たちはクリエイティビティを発揮する。これは影響力のなせるわざだ」。

良い影響力を持つ人間が権力を握ると組織が変わる。

 

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5. 人はスクリーンではなくあなたを見ている

22. リーダーシップは不自然  

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

   

84. インテリジェンスを使う

諜報活動は高級将校の常識だ。事実と機密情報から決定的なチャンスやリスクを炙り出す。ダミアン・マッキニーは言う。「インプットは95%の公開情報と5%の機密情報だ。生死を分けるのはインサイトだ。だからインテリジェンスと呼ぶ」。ビジネスでも、顧客や取引先の何気ない一言と膨大な事実を組み合わせたインテリジェンスの巧拙が勝敗を分ける。

 

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73. 偶然を必然に変える

76. 勝者から学ぶ

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

83. 部下の感情を言語化する

強面の外見に反して、ダミアン・マッキニーの感覚は繊細だ。携帯電話の会話からでもこちらの心を読み取り「懸念があるならまずそれから話そう」などと話題を変える。五感を使った人間観察が習慣になっている。ダミアン曰く、「鍵は言語化だ。怒り、興奮、緊張、嫉妬、怯み。観察結果を言語化できれば対策がみつかる」。

ビジネス界でも感情の観察力を上げ、それを表現する語彙を増やせば対応力があがる。

 

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39. 見る・聞く・感じる

50. 聴くか?死ぬか?

52. 部下に寄り添う

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

82. 語り部を持つ

昨今、社内に語り部を持つことの重要性を説く経営者が増えてきた。しかし、軍隊は別格だ。特殊部隊の軍人となると、みな進んで語り部となる。ジェームズ・キャメロンは言う。「我々の誇りは過去から来る。先人の偉業、激戦の歴史、勝利の地。はじめは教えられるがままに感動した内容を、やがて自ら望んで後輩や部下に話すようになる」。

語り部を持つ会社は強い。

 

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10. 夢は未来から、誇りは過去から

 

ジェームズ・キャメロン  元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。 

   

81. 部下と対峙しない

軍隊では上官と部下が1対1で対峙することを避ける。戦場での不信感は命取りだからだ。マーク・ノートンは言う。「部下の一人が反発しそうになると上官は他の部下を巻き込んでチームで解決を図る。兵士もそれに協力する」。全員で生きて帰る為の知恵だ。ビジネスにも応用できる。

 

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52. 部下に寄り添う

55. 塹壕から飛び出す力

 

マーク・ノートン  元英国陸軍将校。元サンドハースト王立陸軍士官学校教官。 

   

80. 一つ上の訓練をクリアする

ジェームズ・キャメロンは言う。「将校は常に一つ上の階級の訓練を課される。戦場で指揮官の死傷は不可避だからだ。将校は自分の上官が倒れた時にその仕事ができなくてはならない。」

ビジネス界ではサクセッション(後継)プランが形骸化しがちだ。創業社長の後継に苦労するなら分かるが、役員や部長の後継がいないのは組織として怠慢だ。部下が上司の仕事ができる組織は強い。

 

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14. 士官は作られ将軍は生まれる

24. 質より数

 

ジェームズ・キャメロン  元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。 

   

79. ミッションへの貢献だけを褒める

ダミアン・マッキニーは褒め上手だ。良い成果や発言を具体的な言葉でタイムリーに褒める。しかし着ている服や髪型は褒めない。「上官がミッション達成に関係ない事を褒めると部下はそれが重要だと勘違いする。ミッションと関係ない事にエネルギーを使い始める」。

ミッションを明確にする。そのミッション達成への努力を観察し、貢献したものだけを褒める。褒めて人を動かす究極の手法だ。

 

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22. リーダーシップは不自然

 

ダミアン・マッキニー  元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

78. アレキサンダー大王を使う

マーク・ノートンがフォークランド戦争勝利直後の集合写真を見せてくれた。全員ドロドロで笑顔で肩を組んでいる。「だれが指揮官かわからないだろう?これこそ英国陸軍だ。アレキサンダー大王も遠征中はいつも兵士と共に地面に寝ていたのだ。」軍人は自分たちが誇る行動規範の象徴として英雄の名前を使うのが上手い。

企業でも、時に創業者や中興の祖など突出した個人の名前を使う事は効果的だ。社員が行動規範とその具体的イメージを共有している会社は強い。

 

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34. ナポレオンに学べ!

63. 試練と教育がリーダーを創る 

 

マーク・ノートン  元英国陸軍将校。元サンドハースト王立陸軍士官学校教官。 

   

77. 目標設定は論理、目標伝達は心理

軍隊に安全で簡単な目標は存在しない。リチャード・ワッツは言う。「作戦計画の目標は論理で決める。しかし、目標だけ伝えたら兵士が怯む作戦もある。部下にどう伝えるかは心理の世界だ」。

アフリカに初上陸しギザでの戦いに臨んだナポレオンは「兵士諸君、ピラミッドの頂から四千年の歴史が見下ろしている」と言って兵士を奮い立たせた。

ビジネスでも心理を重視して目標を伝えれば成功確率が上がる。

 

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2. 美辞麗句に魂を入れる

10. 夢は未来から、誇りは過去から

20. リーダーの言葉は誰もが覚えている

37. 心に火をつける言葉

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

   

76. 勝者から学ぶ

横須賀の戦艦三笠を訪れたダミアン・マッキニーは、展示物一つ一つに自ら説明を加えて周りの日本人を驚かせた。ダミアンは言う。「日露戦争での日本海海戦は士官学校で細部まで学んだ。特に勝者である日本海軍は徹底的に分析した。」ダミアンはガダルカナルやインパールでの日本軍の惨敗については最低限の事しか知らない。

オリンピックで勝ちたかったら金メダリストを分析する。銀メダリストが負けた理由ばかり分析する人間は稀だ。

勝者の分析が勝者を創る。

 

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73. 偶然を必然に変える

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

   

75. 疑問を取り除く

リチャード・ワッツは言う。「上官は部下も自分と同じくらい計画を理解していると思い込みがちだが、実際には多くの疑問を抱えている。軍隊ではまず自分ならどうやるかを考えさせる。その後で上官の決めた作戦計画と比較して彼らの疑問を炙り出すのだ。」

この手法はビジネスにも応用できる。疑問を取り除き、理解度が上がると腹落ちするまでの時間も短い。士気も高まる。

 

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16. Why do you have meetings?

25. 考えながら戦え

28. 死なせたくないから厳しくできる 

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

   

74. 陽気さを忘れない

ジェッド・ストーンは駐日英国大使館でのスピーチに遅刻をした際、壇上の冒頭で「遅れて大変申し訳ない。タクシードライバーに『ブリティッシュ・エンバシー!』と告げて乗り込み、到着して降りてみたら星条旗がはためいていた!」と話し出し、待ちわびた聴衆を爆笑させた。過酷な戦場を勝ち抜く為の英国海兵隊のバリューは、1勇気、2決断、3ブラザーフッド、4水陸両刀、5フィジカル、最後に、6陽気さが来る。

困難な環境下では、陽気さをバリューに入れるくらいの覚悟も必要ではないか?

 

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6. 笑顔が生死を分ける

12. ジョークが組織を前進させる

54. 弛緩させろ! 

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。

   

73. 偶然を必然に変える

軍隊では成功事例を徹底的に分析する。サー・ロバート・フライは言う。「天候がもたらした幸運や、指揮官の相性といった偶然まで、成功要因を客観的にリストアップする。そこから、不運を避けるテクノロジーや、偶然をコントロールするメカニズムが生まれる。気象衛星の開発や心理学の応用は好例だ。」

幸運と偶然の分析が必然の成功をもたらす。

 

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1. 敵を知る

61. 運を掴め! 

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

   

72. 明確さがスピードを生む

軍隊の指示は明確だ。ダミアン・マッキニーは言う。「明確な指示とは、聞いた人間が何をやればよいか即座に分かる指示だ。『状況を確認して来い』では分からない。『敵がどこまで来ているか確認して来い』なら分かる。」明確な指示がもたらすものはスピードだ。部下は迷うことなく行動を開始できる。

ビジネスでは不明確な指示で部下が迷走する場合がある。上司が指示を明確にする手間を省くからだ。指示を明確にすれば部下の力が結果に直結する。

 

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19. 制約が自由を与える

38. 抽象的な計画は死をもたらす

42. 制約を納得させろ!

 

 ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

  

71. 数字で魂を伝える

軍人は数字によるコミュニケーションを好む。『敵機を多数撃墜』ではなく『9機撃墜』、『早朝に作戦開始』ではなく『0615作戦開始』だ。ダミアン・マッキニーは言う。「数字は最も正確な情報伝達手段であり、世界共通の言語だ。常用するのはナマの数だ。撃墜率より撃墜数の方が行動目標として明確だ。」

ビジネスでも、数字に力が宿るのはリーダーがその数字が引き起こす社員の行動をイメージ出来ている時だ。

数字の力を知るリーダーは強い。

 

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4. 簡潔なものは実行される

13. 誤訳が死を招く

38. 抽象的な計画は死をもたらす

 

 ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

  

70. 組織の習慣が文化を創る

軍隊では言語化された価値観をリーダーが率先して習慣にする。ダミアン・マッキニーは言う。「例えば軍隊第一の価値は勇気だ。テロリストが潜む市街地の危険は尋常ではない。小隊長はパトロール隊の先頭を進み部下に勇気を示す。全ての小隊長が先頭を進む事で勇気が文化になる」。

多くの企業が価値を明文化している。それをリーダーが習慣とすると企業文化ができる。

 

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64. ぶれない仕組みをつくる

68. 習慣が変われば人格が変わる 

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

  

69. 挫けない、責めない

ダミアン・マッキニーは言う。「先が読めないテロリスト戦では、状況が変わると作戦も変わる。明日の正解は誰にも分からない。自分が判断を間違えても挫けない、他人が判断を間違えても責めない。新たな判断が必要になった時はその根拠と目的を伝えれば良い。重要なのはその時点で最良の判断と行動をすることだ。」

コロナ禍のビジネスも同じだ。

 

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12. ジョークが組織を前進させる

29. 不条理は起こる

54. 弛緩させろ!

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

  

68. 習慣が変われば人格が変わる

ジェッド・ストーンは言う。「戦闘地帯では誰かが地雷を踏んだ瞬間、全員が完全に動きを止める。訓練で徹底された習慣だ。泣き叫ぶ仲間を助けに行きたい本能を抑えて地雷原での鉄則を守る。」心理学では習慣の定義を『反復で習得し、少ない心的負荷で繰り返せる行動』とする。

ビジネスでも同じだ。『毎週プランを修正する』『重要決断をオンラインでする』等、頭で理解しても本能では拒絶したくなる行動を可能にするのは反復による習慣化だ。

危機は新たな習慣を身に着ける好機だ。

 

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12. ジョークが組織を前進させる

28. 死なせたくないから厳しくできる

44. スーパーヒーロー効果を信じるな

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。 

  

67. シンプルなものは修正できる

テロリストという予測不能な敵を相手にした現代の戦闘では常に計画の修正が求められる。リチャード・ワッツは言う。「戦いながら修正できるのは元の計画がシンプルだからだ。複雑な作戦計画は、前提が変わると誰にも修正できなくなる。」

ビジネスでは前提が変わると修正が遅れる場合がある。膨大な作業とその後の説明の煩雑さに怯むからだ。

シンプルな計画が修正スピードを上げる。

 

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4. 簡潔なものは実行される

18. 最初の一撃でプランが変わる

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

 

66. 部下への営業を怠らない

サー・ゴードン・メッセンジャーは言う。「総司令官として難しい決断をした時は、部下の指揮官達に時間の許す限り『セールス』を行う。彼らが『命令だからやれ』とだけ伝えるのと、指揮官自身も納得の上『この作戦は必ず成功させるぞ』と伝えるのではパフォーマンスの差は歴然だ。」

日本のビジネスでは承認を得る為に上層部へ根回しという名の営業活動をする事が常識だ。

実行する為の部下への根回しも常識にすれば成果は更に上がる。

 

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50. 聴くか?死ぬか?

59. 全員で考える

 

サー・ゴードン・メッセンジャー  大英帝国二等勲爵士(KCB)、前英国統合参謀次長、トップレベルの作戦の決断と実行に携わる。20年以上に渡り最前線を指揮。https://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Messenger

 

65. 戦場に兵士を置き去りにしない

戦場でどんなに追い込まれても、負傷した兵士を置き去りにしないのは軍隊の常識だ。生きて帰らせるために全員で助ける。時には死体になっても担いで帰る。リチャード・ワッツは言う。「一度でも置き去りにすると、誰もが次は自分だと考える。部隊が崩壊する。」

手痛い失敗をした社員を全員でフォローする会社は強い。 

 

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52. 部下に寄り添う

55. 塹壕から飛び出す力

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

 

64. ぶれない仕組みをつくる

リチャード・ワッツは言う。「組織は戦略を維持するのが苦手だ。だから軍隊ではあらゆる悪条件をシミュレーションし、『それでもこのミッションは達成できる』という自信を全員で共有する。」

不利な情報が入るたびに、「この戦略は間違いかもしれない」と思う人間が出るのはビジネスでも同じだ。組織がぶれる。

最悪への対応を考え抜く習慣が組織を強くする。

 

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8. パニックと対峙する 

51. 言うか?死ぬか?

57. 自信を伝える

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

 

63. 試練と教育がリーダーを創る

ナポレオンは大規模な国民軍を動かすために数多くの指揮官を育てたことでも有名だ。全方位戦争という試練の元、サン・シール陸軍士官学校を創設し体系的なリーダー養成を行ったのだ。

ジェームズ・キャメロンは言う。「試練だけで生まれるリーダーは少ない。教育だけで育つリーダーも少ない。試練と教育が同時に与えられた時にリーダーは創られる。」 

ニューノーマルという試練に教育を組み合わせるチャンスだ。

 

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14. 士官は作られ将軍は生まれる

24. 質より数

60. 資質を炙り出す

 

ナポレオン・ボナパルト  砲兵・騎兵・歩兵の連携や士官学校の創設など、クラウゼヴィッツを経てミッション・リーダーシップに繋がる近代軍隊の基礎を創った。 

ジェームズ・キャメロン 元英国陸軍将校。英国陸軍参謀本部最優秀将校(受賞2回)。大英帝国三等勲爵士(CBE)。最年少でサンドハースト王立陸軍士官学校教官就任。元英国国防省テロ対策部長補佐。2005年のロンドン市内テロ発生時の政府の危機管理対策委員会(COBRA)メンバー。

  

62. 簡潔に話す

軍隊では簡潔な指示は生き残る為の必須条件だ。戦場ではノイズのある無線機を使ってのコミュニケーションが日常的に起こる。ジェッド・ストーンは言う。「戦闘中の指示は復唱で確認する。上官の指示が簡潔ならば部下は復唱できる。復唱できる指示は実行できる。」

ビジネスでも同じだ。簡潔なメッセージが現場を動かす。オンライン会議では顕著だ。

 

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4. 簡潔なものは実行される

13. 誤訳が死を招く

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。 

  

61. 運を掴め!

元寇の神風、桶狭間の豪雨、日本海海戦のバルチック艦隊の航路。戦争の歴史で、一つの幸運にも恵まれないまま勝ったという例は存在しない。ノルマンディ上陸作戦でもヒトラーの寝起きの悪さが連合軍を助けた。ダミアン・マッキニーは言う。「戦場は悪運だらけだ。状況変化を嗅ぎ取り幸運を察知する能力が勝利を呼び込む。」

ビジネスも同じだ。

 

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17. 最後は直感

29. 不条理は起こる

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

 

60. 資質を炙り出す 

サー・ロバート・フライは言う。「士官学校の責任は、実戦で指揮を執る資質の無い者を見極める事だ。もし彼らがそのまま卒業して戦場に出てしまったら多くの部下が死ぬ。」ビジネスでも危機は資質を炙り出す。自社が譲れない資質を明確にし、それを持つものだけを経営者にする企業が勝ち残る。

 

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26. 戦場で評価はできない

32. 「10年早い」が組織を潰す

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

 

59. 全員で考える 

戦場で想定外の事態が発生すると情報が錯綜する。ダミアン・マッキニーは言う。「情報は常に足りない。リーダーは、どの情報が無いか、その情報があればどう仮説が変わるかを考える。一人でも多くの兵士がリーダーと同じ思考をする部隊が生き残る。」ビジネスの危機下も同じだ。リーダーに全情報が集まる迄は待てない。明確なチームミッションを共有し、一人でも多くの社員が自ら考える組織が勝ち残る。

 

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25. 考えながら戦え

50. 聴くか?死ぬか?

51. 言うか?死ぬか?

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

 

58. やり方を変える 

1980年代、英米軍は予測不能なテロリスト戦に対応して上意下達の組織運営を180度変えた。上官はミッションと制約以外を大胆に権限委譲し、現場は自律判断と行動が出来る兵士の養成を始めた。Mission Leadership® だ。

コロナで先が読めないビジネスも同じだ。

最も硬直した組織の一つである軍隊が変わったのだから、企業も変われる。

 

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1. 敵を知る

19. 制約が自由を与える

27. 信頼する前に任せる

 

57. 自信を伝える 

危機下では刻々と状況が変わる。リーダーといえども常に最新情報を得ているわけではないし、その情報が間違いだったと判明することも起こる。それでもリーダーは自信ある態度をとり、部下の信頼を勝ち得なければならない。

ダミアン・マッキニーは言う。「自信の裏付けになるのは、どれだけ考え抜いているかだ。膨大で曖昧で変化する情報と格闘しながら、あらゆる解決策を考え続ける。」

誰よりも考え抜いているという自信は、必ず部下に伝わる。リーダーの自信が部下からの信頼を生み、部下の信頼が着実なアクションを起こす。

 

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18. 最初の一撃でプランが変わる

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

 

56. カリスマはいらない 

サー・ロバート・フライは言う。「予測不能な敵が相手のテロリスト戦では、一人一人の兵士が考えて判断する事が求められる。カリスマに盲従する部下は生き残れない。」

部や課でも簡単にミニカリスマが生まれる。「○○さんが言っているから」で話が通るなら危険だ。

「なぜ」を問う事がカリスマの誕生を防ぐ。

「なぜ」を問う事が考える習慣を植え付ける。

危機は考える社員を創る好機だ。

 

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25. 考えながら戦え

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Fry

  

55. 塹壕から飛び出す力 

銃弾が飛び交う中、塹壕から飛び出し敵前を走り抜けるのは尋常な精神ではない。ジェッド・ストーンは言う。「共に飛び出す仲間がいるから飛び出せる。仲間を殺したくないから飛び出せる。」

ダミアン・マッキニーも口をそろえる。「仲間を好きか嫌いかの次元ではない。極限状態では、自分の為に出る力より仲間の為に出る力の方が遥かに大きい。」

チームで戦うから恐怖に打ち克つことができる。

 

ビジネスも同じだ。

 

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48. 危機下こそ任せろ

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

  

54. 弛緩させろ! 

ある会議が紛糾し始めた時だ。一度トイレに出て帰ってきたジェッド・ストーンが両開きのドアを蹴破るように入ってきて、

「動くな!」

と叫び、銃を構えるポーズをとった。一瞬の沈黙の後、参加者全員が爆笑し平常心を取り戻した。

ジェッドは言う。「軍隊ではチームが不要な緊張状態に入ってしまったら、気づいた人間が全員の目を覚まさせる。」

「5分休憩!」の一言でも空気は変わる。

 

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30. 殺されても死なないから信頼される

 

ジェッド・ストーン  元英国海兵隊将校。 王立海軍学校幹部養成プログラム卒業、山岳共同作戦のスペシャリスト、元鋼鉄ワイヤー滑降世界記録保持。

 

 

53. 絆を活かす

ダミアン・マッキニーは言う。「困難な紛争に参戦する多国籍軍はリーダー同士の個人的信頼を大切にする。戦闘に勝つ為と鎮圧後の地域運営を成功させる為だ。」

ビジネスでの危機下も同じだ。事務的な関係を超えた個人レベルの相談、援助、鼓舞が企業の危機克服を可能にする。危機脱出後は、こうした絆が常識破りのスピードを生み出す。

 

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ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

 

52. 部下に寄り添う

ダミアン・マッキニーは言う。「戦時には平時以上に頻繁なコミュニケーションが求められる。情報伝達を円滑にし、部下の精神的疲労を和らげるからだ。上官は、部下から直接戦況を聴き、奮闘に感謝し、笑顔でジョークを言う。」

ダミアンは外出自粛下のビジネスも同じだと言う。「現場メンバーのテレビ会議にひょいと顔を出す、気軽に部下のスマホに電話する、社員のメールに素早く返信する。リーダーの心遣いと最新テクノロジーの活用が組織を疲労から守る。」

部下に煙たがられる心配は危機が去ってからすればよい。緊急事態下で彼らの力を引き出すのは『自分は上司から大切に思われている』という実感だ。

 

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41. 「しんがり」を評価しろ!

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。

 

51. 言うか?死ぬか?

戦場で作戦会議をする際、各部隊を代表する将校は発言を求められる。必要な発言をしないと不可能な作戦が合意されてしまう。必要な質問をしないと部下に説明できない。合意した後は、100%自分が納得した作戦として部下に伝える。軍隊の常識だ。

リチャード・ワッツは言う。「戦場と比べるとビジネスの中間管理職は失敗すると分かっていても発言を控える事がある。自分の評価や他部門の不満を気にするからだ。軍隊の具申(上官に意見や事情を述べること)に相当する組織ルールも弱い。」

 

勇気とは、起立して声に出すことである  by ウィンストン・チャーチル 

 

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リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

 

50. 聴くか?死ぬか?

刻々と変化する戦場で部下の報告や意見を聴く事は、死傷者を最少にして勝利するために不可欠だ。上官は、自分からの話を最短にする、敢えて後方に座る、発言者の目を見て頷くなど、意図的に部下が話しやすい環境を作る。

ビジネスに於いても、変化する環境下で部下から情報やアイデアを引き出せなければ判断を誤る。サー・ロバート・フライは言う。「戦場と比べるとビジネスでは部下の意見を聞く姿勢が弱い。部下が意見を言い易くするスキルも低い。死ぬことが無いからだ。」

 

勇気とは、着席して耳を傾けることである  by ウィンストン・チャーチル

  

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39. 見る・聞く・感じる

 

サー・ロバート・フライ  元英国海兵隊中将 (KCB, CBE)。9.11同時多発テロ対応英国軍事戦略責任者、英国国防省作戦本部長、イラク多国籍軍副司令官等を歴任。ロンドン市名誉市民。

サー・ウィンストン・チャーチル  サンドハースト王立陸軍士官学校卒。英国海軍大臣(1911-1915、1939-1940)。英国首相(1940-1945、1951-1955) 

 

49. ミッションから逆算しろ

優秀なリーダーであっても常に正しい決断ができる保証は無い。ダミアン・マッキニーは言う。「自分の決断に不安を感じた時は、ミッション達成から逆算する。全ての決断は、生き残ってミッションを達成するための手段だ。」

ビジネスでは、後々の自分の評価や、現在の部下の不満に引きずられて迷いが生じる。命が懸っていないからだ。ミッション達成の最終責任を取る覚悟をすれば迷いは無くなる。

  

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22. リーダーシップは不自然

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。  

 

48. 危機下こそ任せろ

マーク・ノートンは言う。「地上戦で最悪の状況とは敵に包囲される事だ。その時、恐怖に駆られた隊長が本能に従うと、部下一人一人に細かく指示を出してしまう。全滅コースだ。一人の隊長が何十人分の最適行動を瞬時に判断出来るはずがない。生き残る隊長は、どこに血路を開くかという決断に集中し、個別の戦闘判断は部下に任せる。士官学校では本能を抑えて部下に任せる習慣を叩き込む。」
ビジネスでは危機下において上司が全部指示してしまうことがある。逆だ。危機下のリーダーに求められるのは、大局の決断と、現場への権限委譲だ。平時でもそのやり方が組織の力を引き出す。
  

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22. リーダーシップは不自然

27. 信頼する前に任せる

 

マーク・ノートン  元英国陸軍将校。元サンドハースト王立陸軍士官学校教官。 

 

47. 最新兵器を舐めるな

軍人は最新テクノロジーに貪欲だ。優秀な兵士が束になっても最新兵器にかなわない事は、信長の火縄銃、日露戦争の機関銃、第二次世界大戦の航空機と、歴史が証明している。軍人は未完成の新兵器を使う事に躊躇が無い。敵が先に使うリスクを知っているからだ。
軍隊と比べるとビジネス界は最新テクノロジーに対する危機感が弱い。予算、技術的な成熟度、社員の適応力、全社の足並みなど、導入を先送りする理由がいくらでもあるからだ。
ダミアン・マッキニーは言う。「特殊部隊の兵士が10人いても、最新のロボット兵器1台に勝てない時代が必ず来る。自分が使う側に立つ以外ないだろう?」
  

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21.「教える」と「指示する」は違う

43. 恐怖を知れ!

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

 

46. 真のパラシュート部隊を作れ

戦場で最も尊敬される集団の一つがパラシュート部隊だ。敵の後方に展開して挟み撃ちにする効果は絶大だが、包囲されることを前提に単身降下する勇気は尋常ではない。アレックス・マッケンジーは言う。「それでもパラシュート部隊を志願する者がいるのは、困難なミッションを成功させる鍵だという誇りがあるからだ。」
ビジネスではパラシュート部隊のイメージは悪い。本社から着任して短期間様子だけ見て戻る人間がいるからだ。尊敬すべきは、仕事の大小に関わらず、降下後の退路を断って奮闘する人たちだ。
彼らが誇りを持って困難なミッションに挑戦できる組織は強い。
 

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41.「しんがり」を評価しろ

 

アレックス・マッケンジー  元英国陸軍将校。アフガニスタン戦争でパラシュート部隊指揮官を務めた。地雷で足を失った兵士たちによるカヌーでの大西洋横断Row2Recovery 代表。

 

45. 勝どきを上げろ

古今東西、軍隊は勝利の直後にリーダーの音頭で勝どきをあげる。ダミアン・マッキニーは言う。「戦場は嵐の中と同じだ。兵士には戦闘が終わったことすら分からない。味方には死傷者もいる。だからこそ、勝利の直後に全員で祝福する勝どきが不可欠なのだ。」
年間売上を達成した最終日、巨大システムの稼働初日など、高い目標を達成した時ほど社員の疲労は極限に達している。そこに至る過程では不条理に近い無理を強いた事もあろう。ビジネスリーダーも勝どきのタイミングを忘れてはいけない。
今から勝どきの準備をしておかないか
 

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41.「しんがり」を評価しろ

 

ダミアン・マッキニー   元英国海兵隊将校。大英帝国五等勲爵士(MBE)。1999年マッキニーロジャーズ設立。東アフリカ、ケニア生まれ。 

 


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