2.美辞麗句に魂を入れる

2001年10月7日、アメリカ同時多発テロの首謀者アルカイダを匿うタリバン掃討という大義の下、米英軍によるアフガニスタン戦争は国連安全保障理事会の承認無しに強行開戦された。

 

岩本仁は言う。「英国が、異国で異国のために戦う『不朽の自由作戦』と名付けられたアフガニスタン戦争で、軍上層部が最も危機感を抱いたのは、現場指揮官による兵士へのビジョン=戦闘の最終目的の徹底だった。『不朽の自由』という高尚なビジョンは、『祖国を守る』といった第2次世界大戦下のような自明のビジョンとは根本的に異なるからだ。」

 

カリブ海バルバドス島のプランテーションハウスで岩本と語り合っていたリチャード・ワッツは言う。「全兵士が『ビジョン』に納得していることは戦闘の絶対条件だ。ひとりでもビジョンに疑問を抱いていたら、その部隊は機能しない。私は主力大隊の指揮官として、アフガニスタンでの作戦開始当日に、小隊長のひとりが部下達に向かって『お前たちが戦闘中に何を考えるかは強制できない。ただ俺は、ウサマ・ビン・ラディンの生きている世界で自分の子供を育てたいとは思わない。だからこの戦闘に死力を尽くす。』と語っている姿に勝利を確信した。」

 

士官学校のプログラムをビジネスに応用することに情熱を傾ける岩本は言う。「誰でも上層部が決めた美辞麗句に文句を言うことは出来る。ビジネスに於いても『シェアナンバーワン』といったかつての単純なビジョンから、『顧客価値の最大化』といった高尚なビジョンを設定せざるをえなくなってきている。このような環境下で勝敗を分けるのは、ビジョンに込められた真意を理解し、現­場が納得する言葉で説明出来るリーダーの多寡だ。そのようなリーダーの大量生産には意識改革の仕組みが不可欠であり、軍隊でそれを担うのが士官学校だ。もちろん、ビジョンそのものに魂を入れるのがトップの役目である事は言うまでもない。」(マッキニーロジャーズジャパン 清水 泉)

 

リチャード・ワッツ  元英国海兵隊将校。大英帝国四等勲爵士(OBE)。アシュリッジ・ビジネススクール、マンチェスター・ビジネススクール修了。

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